遺言書の検認手続き
障害年金、成年後見、遺言、親亡き後の社労士行政書士「遺言書検認サポート」
身寄りのない、相続人の存在が分からない、グループホーム等に入居されている方が亡くなったら
自筆証書遺言は、自ら字を書ける方が、自分の資産を、お世話になった方にお譲りしたいと思ったときに、ご本人様が自分で作られる、法的効力がある、本当の気持ちを伝える大切な書類です。その方の感謝の気持ちが素直に表現されたこの書類、身寄りがない方の場合、どうやって亡くなった後に遺言書に沿って実現していくか。その方の生きてきた証を、最期に実現するための大切な手続きとなります。
自筆証書遺言書のデメリット
自筆証書遺言は気軽に作ることができ、安価な分、あとから様々な面倒な手続きが発生する場合があります。経済的余裕のある方には、作るときにはお金が掛かりますが、後々安心な「公正証書遺言」をお勧めするのが一般的です。ただし、2020年からスタートした法務局に自筆証書遺言を保管してもらう制度(自筆証書遺言書保管制度 (moj.go.jp) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html )は、安価であり比較的手続きが簡単です。私は、法定相続人がどの様な方かがはっきりしていて、かつご本人様が明確な意思をお持ちである場合には、こちらの制度を推奨しています。
今回は、知的障害がある方で、障害者のグループホームに長く入居され、路上生活などもされていた方が、全く身寄りが分からない場合について、亡くなった後に自筆証書遺言書が発見されたときの手続きについて注意点等を説明していきます。
①グループホーム入居者が亡くなったら
最初に医師の死亡診断書の作成があり、死亡届の提出となります。
ここまでは、施設を運営する社会福祉法人の理事長や施設長等の身近な方が、「家屋管理人」等として市町村役場に手続きをすることになります。
さて、お部屋を片付けていたら、「遺言書」と書いて封がしてある、封筒が出てきました。
どうすれば良いでしょう。
②自筆証書遺言書(法務局の自筆証書遺言書保管がなされていないもの)については、
居住地の家庭裁判所の検認の手続きが必要です。
出てきた遺言書の内容が気になるところですが、開封はしないでください。民法1005条により、過料が科せられる恐れがあります。
家庭裁判所の具体的な検認手続きについては、ホームページ「遺言書の検認 | 裁判所 (courts.go.jp) https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_17/index.html 」に記載されています。
順番に説明していきます。
③まずは相続人の有無の確認です。具体的には、戸籍謄本などを片っ端から取り寄せます。
ケースバイケースで取り寄せる戸籍類は違ってきます。裁判所の説明をよく読んで、取り寄せましょう。今回のケースでは、
1.まず亡くなられたご本人の、除籍謄本と原戸籍について、生まれてから亡くなるまでの間が繋がっているものを取り寄せます。親や子、兄弟の存在が分かります。
2.次に両親の、生まれてから亡くなるまでの間が繋がっているもの。他に子が居ない事が分かります。
3.次にご兄弟の、 4.最終的には甥姪の、と順を追って解明していくことになります。
5.そして、法定相続人の住所を調べるため、戸籍の附票も必要となります。
今回のケースでは、法定相続人で生存している方は甥の一人のみでした。全く疎遠となっている法定相続人の甥に、わざわざ遺言書で遺産相続をするという事は考え難いので、後々の手続きが必要となることが想定されます。
ここで、ポイントです。
今回のケースでは、戸籍を請求している方が、遺言書を保管している者という立場でした。行政書士は委任状を貰って手続きをします。すると、戸籍類の請求について市町村役場によって、請求書以外の求められるものが違いました。
例えば、ご本人がその施設に本当に入所していたのか、契約書を提出しなさいとか、施設運営法人の登記簿を提出しなさいとか、親の戸籍を請求している場合でもご本人の生まれてから亡くなるまでの戸籍(子供が居ないという証明)を提出してください等様々です。
これは、役場の言う通りにするしかないでしょう。ですが、大体がファックスで対応してくれます。
次のポイントです。
郵送で依頼するとき、定額小為替をいくら分同封するか、悩むところです。
私の場合は、電話して聞いています。大体の役場が「750円2枚あれば良いと思います」という回答です。なので、一枚で済むと返却されてくることになります。
定額小為替の金額は450円、500円、750円 、1,000円という感じです。一枚につき手数料が2022年1月17日から1枚200円に値上げされました。しかも、定額小為替には有効期限というものがあり、為替の裏面に小さい文字で注意書きが書いてあります。
なので、郵送で各市町村役場に依頼する際は、必要枚数をその都度購入して無駄の無いようにしますが、どうしても数枚役場から返却され、余ってしまいます。その際は、他の行政書士に譲るか、自分で換金(手数料200円は戻らない)する事になります。
最後のポイントです。
この戸籍を収集する代金を誰が支払うのか、という問題があります。遺言書にそのことが書かれていたとしても、まだ開封していないので分かりません。本来は、検認の申立てをする者が支払うべき性質のものです。
したがって、施設入居時の契約書には「死亡後の事務にかかる経費はご本人の負担とする」というような文言を予め入れておくのが良いと思います。
④戸籍が揃い、法定相続人が確定したら、裁判所への検認申し立てをします。
申立書は、申立人に書類を作成してもらい(困難な場合は司法書士に依頼)ます。申立人の立場は遺言書を保管している者ということになります。
もう一つ当事者目録という、相続人の氏名、生年月日、住所、本籍地等を記載する用紙があります。分かりやすくするため、相続関係説明図を付けると良いと思います。
これら書類と遺言書を持参の上、収集した戸籍とともに、申立書を提出します。印紙や切手も必要となります。
ここで、戸籍を返還してもらうため「返還請求」も同時に提出するのを忘れないでください。
裁判所の方は、レアなケースですと、色々と説明をしてくれるでしょう。おおよその検認日も知らせてくれます。
ここでポイントです。
遺言書に何が書いてあるかまだ分かりませんので、遺言執行人の指名が無いことが考えられます。ですので、同じ家庭裁判所ですので、遺言執行人選任申立
(遺言執行者の選任 | 裁判所 (courts.go.jp)
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_18/index.html )の書類も貰っておくと良いと思います。
また、検認調書の謄本というものが、当日以降に裁判所で作られます。その謄本が後々必要になる可能性もあるので「調書謄本の申請書」の書類も貰っておきましょう。
⑤検認日当日
裁判所から、申立人や法定相続人に対し、検認日の何時に裁判所にお越しください、と郵便が届きます。申立人は遺言書を持参して裁判所に出向くことになります。
検認手続きは簡単ですので、付き添い等は必要ないと思います。
遺言書が開封され、裁判所が検認した証明書とともに遺言書が返却されます。
ここまでが、検認の手続きです。
さて、遺言書に何が書かれているかで、その後の対応が変わってきます。 つづく