元保健所職員の新型コロナ対応奮闘記①





元保健所職員のつぶやき

これを書いているのは2022年7月25日です。
新型コロナウイルス感染症の第7波の勢いは増す一方で、
先週の状況は全国で20万人を超え最高値を毎日更新しています。

ところが今朝のニュースでは、
3年ぶりに行動制限がない夏休みがスタートしたことで、
観光地では大勢の賑わいを見せている様子が流れていました。

保健所職員の率直な感想は、
若い方が遊びに行ってちょっと熱が出たからと言って、
何でもかんでも保健所に相談するのは如何なものか、 と感じているでしょう。

保健所の電話が鳴りやまなくなりなかなか繋がらない、
休日夜間診療所には発熱者の行列が出来ていて、何時間も待たされる

という現象は、ある程度予想出来る事です。
保健所や医療機関の現場は、政府方針の帰結を現在直接的に被ってしまっていて、
具合の悪い患者さんが不安になってしまうのも、また無理のないことです。
私が経験した保健所での出来事を書記すことによって、将来何らかのヒントになれば良いのではないかと思い、ブログという形に残そうと思います。

自己紹介

私は横須賀市保健所を2022年3月末で退職しました。

最後の約2年間のコロナ対応での残業時間は、
市役所生活38年の中で飛びぬけて一番多いものでした。

保健所での主な業務は、病院や診療所、薬局の許認可をする担当でした。所謂「医療監視員」「薬事監視員」というお堅い仕事です。

保健所にもいろいろな仕事があり、
結核などに代表する感染症業務、難病患者さんの事務手続き、心の病を患う方への相談等、直接人に対する仕事を対人サービス、

病院とか飲食店、床屋さん等、事業者に対して保健衛生上の監督をする仕事を対物サービスと呼びます。

私は対物で、医師歯科医師、薬剤師等の事業者の方に、
医療法なりの法解釈を説明し法に沿った事業をしていただくよう指導する仕事ですので、
法解釈論をかなり勉強しなければならないということになりますが、典型的なお役所仕事です。

ただ、あそこのクリニックは医療法に違反しているので、何とかしてくれ、という患者さんからの相談はあります。

一方の対人サービスは

対人サービスの場合は、
定めがあってもその方の生活というものがあって、
そんなことは出来ないという話になります。
出来ないなら仕方がない、とそのままにしておくと、
その方の身体は状態が悪くなってしまうことが多いのです。

そこで面談や相談の中で、
ではこういうやり方はどうですか?という話しになるのですが、
その対象人数が多いと相談を聞くだけで時間がかかり、次から次へと相談に追われるという業務になってしまいます。

どうしても高齢化や社会状況から、人口は減っているものの、
保健所にご相談される方は増加傾向となります。

このように、対人と対物サービスは趣がかなり異なる業務という事になりますが、
当時横須賀市の保健所で、感染症の相談を直接受ける担当(保健師等)は、4名程度しかおりませんでした。

様々な資格を持つ医療職が保健所には配置されてはいますが、コロナウイルス感染症の専門家はそんなにも少ないという事です。

そのような体制の中で、全国の保健所が新型コロナウイルス感染症の対応を余儀なくされたのです。

新型コロナの保健所業務

保健所の業務は大きく分けて、以下のとおりに分類できます。

まず、コロナが流行しているので市民の皆さんに気を付けましょうというところとして、
①不安な市民に対し電話での相談に応じ、必要な方にPCR検査をしてもらうという相談部門。

次に陽性となったので、
②その方がどの様な経路で感染したのか、そして感染を広げないために、濃厚接触者等にPCR検査を実施していただくようご案内。そして本人について、入院か施設への入所か、自宅療養で大丈夫かという処遇決定等、積極的疫学調査をする疫学調査部門。

本人の処遇により、
③入院勧告書(入院する人全員)、就業制限通知書(陽性者全員)、もう自由になりましたという就業制限解除通知書(陽性者全員)の、書類送付事務としての勧告部門。
送付書類はケースによって、ご本人から保険金請求や労災給付等の手続きのための、療養証明書の発行、本人の取得によって入院費用の負担額が変わるため、入院者には世帯所得調査関係書類等多岐に渡ります。

そして、④県や国に対し陽性患者数等を報告したり、県や国からのメールでの通知や指示を確認したり、横須賀市のホームページにコロナの情報をアップデートしたりする広報部門。

また、⑤医療機関から報告が上がってくる陽性患者情報を確認し、調査等に流していくという裏方作業があります。

このように、新型コロナウイルス感染症であっても、
感染症法第2類相当という決まりの中で、ひとり一人の陽性患者に行う対応は一定の決まりがあり、それに沿わないとなりません。

しかも前段に申し上げた通り、本人の処遇等(入院、施設療養、自宅療養)を決めるのは、家族構成や年齢、基礎疾患等様々な要因をトータルして決定すべきであり、各患者さんへのオーダーメードな対人サービスが一番求められる場面なのです。
しかし現実は余りにも数が多すぎて、という実態は否めません。

次回以降は部門ごとの奮闘をご紹介いたします。   つづく